僕には幼馴染の親友がいる。
とても穏やかで優しく少し頑固な人間で、人生で一度も殴り合いのケンカをしたことがない、そんな男だ。
僕とは殴り合いとまではいかないが、口喧嘩は何度かある。
昔はひどい人見知りだったが、今は飲み屋で店長をしている。飲み屋で働くようになって、人見知りな性格とはおさらばしたようだ。
楽しそうに働いている姿を見ていると僕も微笑ましくなる。
彼とは幼稚園からの付き合いで、かれこれ知り合って36年である。長いな。
小学校のときは同じサッカーチームに所属していた。彼は泣き虫くんで、よく番長的なヤツのグループにからかわれていた。
僕はそのグループに加わることこそなかったが、庇ってあげることもできなかった。ひどいイジメをされていたという印象はないと彼は記憶しているらしい。
からかわれてはいたものの、よくみんなで遊んでいたので僕もそのような記憶はない。
番長的なヤツと彼の関係は、ジャイアンとのび太の関係をもう少しやんわりさせた感じだろうか、、、。
僕と2人でもよく遊んでいたが、すごい気が合うかといえばそこまででもない気もする。好きな漫画も好きな歌手も違っていた。一体当時何を話していたのかと思う。
思えば、僕の友達は好きなものが違う人たちばかりだ。
僕が彼のことを「こいつは一生の友達だ」と心に決めた出来事がある。
それは中学2年生のとき。
僕の父の告別式でのことだ。
お通夜にはたくさんの友人たちが来てくれた。その中にもちろん彼もいた。みんな僕に向けてどんな表情をすればいいのか分からない、、、っていう顔をしていたのを覚えている。
しんみりしている人もいれば悲しんでいる人もいる。「おー」と軽く手をあげる人もいたし唇を噛み締めうなずいている人もいた。
僕はその場では泣かないと決めていた。
一夜明け、地元の集会所で行われた告別式。その日は平日のため友人たちはみんな学校に行っている。当然僕は休み。僕が中学生のときは、なるべく学校を休まないで行き皆勤賞を狙うのが当たり前の時代だ。と思う、、、。
周りを見渡せば、たくさんの人が来てくれていたし、道路のほうにまでたくさんの献花があった。たくさんの企業からの献花を見て、「お父さんってすごかったんだな」と父の遺影をギュッと握り締め思った。
そして告別式が終わり、霊柩車に乗って移動するとき僕は窓から外の人たちを見ていた。
すると、たくさんの人に紛れている親友の姿を発見したのだ。親友はお兄さんと一緒に立っていた。
まさか!「今日学校のはずだろ!」
僕はその瞬間、堪えていた涙がボロボロと流れてきた。
学校を休んでまで来てくれた彼の気持ちがとても嬉しく、僕はこのとき「こいつは一生の友だちだ」と思ったのだ。
大人になってそのときの話をすると、彼は兄貴に言われたから行っただけだと言う。
テレ隠しなのか本当のことなのかは分からないが、このとき以来僕は彼を親友だと思って接している。
よっぽどのことがなければ、疎遠になることはないと思う。
そんな彼とこないだ僕たちが通っていた幼稚園に遊びに行った。その話はまた今度、、、、。
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